飲食で働いている人って、料理をするだけでなく食べるのも大好きって人が多いです。
ボクも、もちろんそう。
あんなけ毎日食品を扱っているのに、休みの日もやっぱりうまいもんを求め、都内をさまよう習性があります。
普段から勉強もかねて、色んな店に突撃するわけですが、当たりもあればハズレもあるのはしょうのないことなんですが。
ハズレって言ってもね、別にまずいとかそういうんではないんですよ。
むしろ都内でまずい店に当たる方が難しいんちゃうかな。
どこ行ってもそこそこおいしい。
じゃあなんでハズレなんかというと、もう1度行きたくなるほどの理由がないんです。
あそこの店また行くぐらいなら、新しい店を攻めた方が新しい発見があるなーみたいな感じ。
それぞれの時代で飲食業界に求められてきたこと
飲食業界に求められていることは時代とともに変化してきました。
戦後はとにかく食べるものがなくて、みんなお腹を空かせていた時期。
だから何よりもまず生きるために食べないといけなかった。
それが「胃袋で食べる時代」
高度経済成長からバブル経済になってくると飢えることはなくなった。
そうなるとよりおいしいもの、珍しいものが求められるようになる。
「目・鼻・舌で食べる時代」
そして現代では、あらゆる料理が当たり前に食べられるようになった。
おいしいのは当たり前。珍しいものなんて方が珍しい。
もっと健康になれるような、おしゃれで自慢できるような。
「頭で食べる時代」になったってことです。
現代に求められている飲食店とは?
全国チェーンの飲食店の売上が落ちているなんてニュースをたまに見たりするけど、理由は簡単。
わざわざいつでもどこでも食べられるものを金払ってまで食べたくないから。
もちろんボクだって飲み会でチェーン系の居酒屋を使うことはあります。
でもそれって、その店じゃなくてもいいよね。
予算と人数さえ合えばあとは場所がなるべく近い方がいいやってくらいで、積極的な理由はない。
本当に食事を楽しみたい時は絶対に選ばないはず。
「どこでも同じ」っていうのはひとつの価値だとは思うけど、飲食業において、特に個人経営のお店にとっては「どこでも同じ」なことをやってたら確実に潰れます。
そんなことは大きな会社がやった方がコスト抑えられて強いに決まってるからね。
じゃあどこで勝負するかっていったら「いつもと違う」「ここで味わえない」こと。
この要素をどこまで突き詰められるかが現代の飲食店にとっては超重要なんです。
今やお取り寄せや出前で世界中のうまいものが自宅でも食べられるのに、なんでわざわざ店に行ってまで食事をするのか。
技術の進歩もあって、冷凍やチルドのパック食品もかなりおいしくなりましたからねぇ。
それでもやっぱり、その店でしか味わえない時間というのは確かにあります。
分かりやすい例でいうとここ。
スカイツリーの展望デッキにあるレストランです。
世界一高い電波塔の中で食事ができる場所はここしかないわけで、それだけですごい価値になっとるわけです。
まあだからって、何回も行くかっていわれるとそうでもないっていうのが飲食の難しいところ。
個人でやれる規模でもないしねー。
どこにもないお店を作ろう
どこにでもあるようなお店は自分がやらなくてもどこかの誰かがやってくれます。
だから、自分の店をやろうと思った時点で、どこにもない店を作るしかないんです。
じゃないとやる意味がない。
自分とお客様が心地よくいられる空間で、純粋で力強い食材を生かして、食べたい人がおいしいと感じられるものを、食べてほしい形で提供する。
食べることは生きること。
これからの飲食店は生き方のスタイルにまで踏み込んだものを打ち出していかないとおもしろくないんじゃないかなぁ。
「頭で食べる時代」の次は「心で食べる時代」がやってくる。
食事の目的は、消化でも消費でもなく、思い出に残る時間を過ごすことになる。
そういう体験を共有できる場所としての店を作ること。
これが今取りかかり始めている計画の第一段階です。
きっかけはいつもシンプル。
自分が欲しいものがない。だから作る。
まいどおおきに!