4月になって今年も新しいスタッフが増えました。
数ある仕事の中で飲食業を選んでくれたことは素直にうれしいし、ウチの店に来たからにはガンガン経験を積んで成長しまくってほしい。
で。
実際の現場で新人達にまず教えること。
それは調理技術でも接客用語でもなく、「飲食店スタッフは何のために働いているのか?」という根本的な目的の部分です。
ここがしっかりしていないと、迷った時に何を基準にして考えればいいかわからなくなってしまので、店舗で新人教育をしている方に意識してほしいポイントをまとめました。
もくじ
飲食業の目的はただひとつ
飲食店スタッフは何のために働いているのか?
それは「お客様に喜んでいただくため」です。
そんなん当たり前やん、って方も多いでしょう。
でも、この基本的なことをどれだけ徹底できるかが飲食店のレベルの差になってきます。
特に一通り作業に慣れてきたスタッフに多いのが、メニューを覚えたから、レシピ通りに料理が作れるようになったから、仕事ができると思い込んじゃう人。
これ、勘違いですから。
メニューの知識があったり、料理が作れたりっていうのは基本装備でしかなくって。
大切なのはその武器を使って、どれだけお客様を喜ばせられるか。
昔のボクはまさにこの勘違い野郎でした。
ちょっと人より肉がさばけるからって調子に乗ってた。
でも、そんなことってお客様に伝わらなければ何の意味もないことなんです。
ただの自己満足。
極端なこといってしまえば、料理なんかまったくできなくても、水を出しただけでお客様を満足させられれば勝ちなんです。
もちろん料理に対する知識や技術はあった方がいいですが、それが目的になってしまっては「うまいものさえ作っていれば客は勝手に集まる」みたいなお客様の顔を見ない店になってしまいます。
飲食業の目的は「お客様に喜んでいただくこと」
これ以外あり得ません。
わざわざお客様が時間とお金を払ってまで店にいらっしゃってくれるのも、家の食事では味わえない満足感を得たいから。
料理も接客も、それを達成するための手段でしかないんです。
だから飲食店のスタッフは新人であろうがベテランであろうが、「お客様に喜んでいただけるにはどうすればよいのか?」を常に考え続けなければなりません。
お客様を喜ばせるスタッフがやっていること
喜ばせるといってもやり方は無限にありますし、すべての方を喜ばせられるなんていう奇跡のような方法もありません。
でも、ボクが実際にやってみたり、他のスタッフがやっているのを見て、これは絶対にやっといた方がいいぞっていうのはあります。
あらゆるジャンルの飲食店に当てはまる、かつ、すぐ実行できることなのでぜひ今日からの営業で実践してみてください。
【1】親しみを持ってお客様を迎える
まったく知らない人の家に入るって勇気がいりますよね。
飲食店でも同じです。
入ったことない店に行く時は期待と不安が入り交じっているもの。
そんな状態なのに、スタッフから無愛想な対応をされたらどれだけ料理がおいしくても楽しい食事にはなりません。
「お客様が来てくれてうれしい!」みたいなウェルカム感ってけっこう伝わるもんなんですよ。
店が込み合っていてバタバタしている時にたまたましてしまったおざなりな対応が、そのお客様にとってはその店のイメージのすべてになってしまう。
これって最悪なパターン。
できるスタッフはたとえ満席の時でもお客様の気持ちをつかんでしまいます。
「せっかく来ていただいたのに、すいません!今、満席でご案内できないんです。あと30分ぐらいでお席空いてくると思うんですが、よろしければこちらからお電話しましょうか?」
こんな感じのセリフを決めてられたものではなく、自分の言葉として伝えることができます。
新規のお客様だけでなく、リピーターを増やすために常連様への対応も大事。
ぶっちゃけ、飲食店を長く続けていくにはどれだけ常連客をつけられるかが勝負ですからねぇ。
店に入った瞬間に「どうも!○○さん、お久しぶりです!」といえるか。
「顔と名前を覚えていてくれた!」というのはお客様にとってめちゃめちゃうれしいことです。
お金かかる豪華なサービスよりも、無料でできるちょっとした声かけの方がお客様の感動を呼ぶんですよ。
【2】頼まれる前にお客様の要望を察知して実行する
お客様の好みや状況は千差万別なので、すべての注文を把握することはできません。
でも、よく観察していると、なんとなく予想することはできます。
わかりやすいところでは
- 男性サラリーマンだけのグループはとりあえず生ビールを頼む可能性が高い
- 食事前に薬を飲む方は水が欲しい
- 海外からのお客様は英語メニューが必要
- お子様連れのお客様にはスプーンやフォーク、ストローがあると食べやすい
- 接待のお客様はこちらで料理を取り分けておく
- 氷がグラスにぶつかる音が聞こえたらドリンクのおかわりを聞くタイミング
- 箸を落としたのを見たら、すぐに代わりの箸を渡す
服装や年齢、グループ構成など。
あらゆるところにヒントはあります。
五感をフルに働かせ、毎日ひたすらお客様のことを考えていると、ご新規であってもなんとなく直感で注文がわかるようになってくるんですよね。
あとは先手を打って行動する。
もちろん、予想を外すことはあるんですが、やり続けないと的中率は上がりません。
まずはゲーム感覚で、お客様が来店されたら最初の注文をスタッフ全員で予想し合うところから始めてみてください。
スタッフのお客様への集中力が高まるし、対応も早くなるという一石二鳥!
常連様ともなると事前情報がある程度わかっているので、予想もしやすいはず。
好みを覚えておけば、量を調節したり、嫌いなものを抜いたり、できる範囲でちょっとしたアレンジできるので「この店は私のことわかってくれてるな!」という居心地のよさにつながります。
うちの店だとお客様の情報は常連様ノートでスタッフ全員に共有しています。
常連様ノートはお店の宝物。
おかげで、いつも同じメニューを頼むお客様には席に着いた瞬間に食事を提供する、なんていう攻めた技も使えるようになります。
【3】時にはルールを破る
食事に関するマナーやルールは突き詰めていくとかなり複雑です。
無用な混乱を起こさないために決められたルールですが、ルールを守ることがお客様のためにならない時は思い切って破ることも時には必要です。
例えば、シャンパンの抜栓。
正しいマナーでは音をさせず、静かに栓を抜かなければなりません。
ただし、パーティーなんかで勢いよく音をさせて栓を飛ばしたりしますよね。
お客様が盛り上がって楽しんでくれるならそちらの方が正しい。
「マナー違反なんで音は出せません」なんていったら、興ざめです。
もちろん、マナーはマナーでちゃんと心得ておくのは必要です。
しっかりマナー通りのこともできるのに、狙った上であえて破る。
この振れ幅が接客の幅になってきます。
他にも、ラストオーダーを過ぎて来店されたお客様がいらっしゃった時。
ルール通り「今日はもう終わりなんですいません」なんて断ることは簡単です。
でもそこで「今日だけ特別にがんばるんで、次は早目に来てくださいね!」みたいな感じで対応することができれば、次も来店してくださる可能性はかなり高くなります。
ルールを破ってでも次につながるならば、思い切ってやる。
タイミングによってできるできないはあるので、状況を一瞬で見極めて決断できるかが重要になってきます。
判断基準はやはり「お客様に喜んでいただけるか」
もちろんやりすぎると逆にご迷惑をかけてしまうこともあるので、最悪ちゃんと自分でフォローできる範囲でやるようにしましょう。
「いつもはやってないんですが、今回は特別ですよ」と一言付け加えるだけで、無用なトラブルを避けることができます。
「この前はやってくれたのに、なんで今日はやってくれないの?」なんてことになって、結局お客様を不満にさせてしまっては何の意味もない。
ルールを破って例外を増やしすぎると収拾がつかなくなって、お店が崩壊してしまうリスクがあるってことは覚えておいてください。
最後に
飲食業は人間産業と呼ばれるぐらい、人の力に左右される業種です。
「美味しい料理」だけをウリにしている店は本当に大事なことをわかっていません。
お腹を満たしたいだけなら機械が作ったっていいわけですから。
飲食店をやるなら、お腹だけでなく心まで満たしてこそ。
そのためには「どうやったらお客様が喜んでくださるか」を考え続ける気付きが欠かせません。
長々と書いてきましたが、実は難しいことでもなんでもなくて。
自分がされてうれしいことをやる。
それだけのこと。
そして、それだけのことを徹底してやるのが飲食業です。
成長の早いスタッフはみんな「自分がうれしいと思えることをお客様にもしてあげられる素直さ」を持っています。
心配しなくても、技術は続けてさえいれば必ずついてきます。
まずはお客様としっかり向き合って「喜んでいただけるにはどうすればよいか?」を考えて、できることから始めていきましょう。
飲食業なんて正直、しんどいことも多いです。
でもせっかくやるんなら、飲食業で働く楽しさややりがいも知ってほしい。
一緒に業界盛り上げていきましょう!