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レビュー

【読書】又吉直樹「火花」は本気でがんばっている人への応援歌である

みなさん、「火花」読みました?
まだの人はぜひ読んだ方がいいです。

めっちゃおもしろかったんで。

読みながら思ったんですよ。
この小説はがんばってるけどなかなかうまくいっていない人への応援歌みたいな話だな、と。
芸人のことはあんまり知らなくても伝わってくるパワーがありました。

そんな「火花」の魅力をお気に入りの部分を引用しながら紹介していきます。

 

「火花」の魅力【1】芸人だからこそ書ける生々しい世界

芸人ピース又吉さんの初中編小説。
ネタは見たことあったけど、小説は初めて読みました。

純文学好きだけあって、情景描写や地の文は多目。
文章を読み慣れてない人には読みにくいかもしれませんねー。
著者が現役のお笑い芸人だけあって、下積み時代の描写なんかはリアリティあります。

汚れたコンバースで楽屋に入ると、同じように貧相な格好をした連中が沢山いた。彼等は、束の間、自分が世間から置き去りにされ、所詮芸人と馬鹿にされていることを忘れさせてくれた。それは駄目な竜宮城みたいなものだったかもしれないけれど。一言も話したことなどなくとも、もし彼らがいなかったら、こんな狂った生活を十年も続けることは出来なかっただろう。

芸能の世界は売れてなんぼ。

どれだけがんばっても売れずに、誰からも知られることなく終わっていく人だっていっぱいいるはずです。
ボクも一瞬だけ、芸能界に片足を突っ込んでいた時期があったのですが、まあ本当に日の目を見るのはほんの一握り。砂の一粒。
当時、一緒に舞台作ったり、ドラマのエキストラに参加したしていた人で今も名前を聞く人はひとりもいません。

そんな世界でもなんとか踏みとどまっていられるのは、同じ世界で生きる仲間やライバルがいるからなんやろね。

 

「火花」の魅力【2】舞台に立ったことがある人間だからこそ言えること

現実世界では又吉さんは芸人としても売れているし、作家としても活躍されています。

でも、小説の中で主人公の徳永はちょっと売れてはまた落ちて、を繰り返しています。
そんな状態だからネットでは好き放題に叩かれまくり。
そんな人たちに対して徳永は怒ったりしません。

若手芸人に対する否定的な意見には、笑わせてあげられなくて申し訳ないと思った。常に芸人が面白いという幻想を持たせてあげられなくて残念に思った。

小さい頃からなりたかった漫才師になったのに、成功できなかったのを誰かのせいにしてもしかたがない。
ただ、無謀な挑戦をすることで、徳永は自分の人生を生きたという実感を得たのでした。
だから、ネット上で批判ばかりしている人に対してこんなことを思います。

もしも「俺の方が面白い」とのたまう人がいるのなら、一度で良いから舞台に上がってみてほしいと思った。「やってみろ」なんて偉そうな気持など微塵もない。世界の景色が一変することを体感してほしいのだ。自分が考えたことで誰も笑わない恐怖を、自分で考えたことで誰かが笑う喜びを経験してほしいのだ。

これって、どんな世界でも言えることなんですよね。

結果が出ようが出まいが、やっぱり実際に舞台に立ち続けて戦った人間の方がカッコいいです。
少なくともボクは、舞台に上がることもしないのに、文句だけは偉そうに言うような人間には死んでもなりたくない。

舞台で得たモノはその人の力になるし、その世界で成功できなかったとしても、人生において経験が無駄になることは絶対にない。

 

「火花」の魅力【3】格好悪くて格好よい

この小説って、男の生き方の話なんですよね。
人によってはまったく理解できなくて終わるかもしれない。

なんだ、こいつら、バカなんだな、みたいな。
その通り、バカでカッコ悪いし、人間としては相当危ない。
特にもうひとりの主人公である先輩芸人の神谷は芸一筋みたいな人で、金もなければ甲斐性もない。
それでも後輩の前では精一杯カッコつけるし、愛にあふれている。

でも、ずっと笑わせてきたわけや。それは、とてつもない特殊能力を身につけたということやで。ボクサーのパンチと一緒やな。無名でもあいつら簡単に人を殺せるやろ。芸人も一緒や。ただし、芸人のパンチは殴れば殴るほど人を幸せに出来るねん。だから、事務所やめて、他の仕事で飯食うようになっても、笑いで、ど突きまくったれ。お前みたいなパンチ持ってる奴どっこにもいてへんねんから。

こんなん言われたら泣いてまうでしょー!

 

「火花」の魅力まとめ

芸人だけじゃないですよね。
どんな世界だって、なかなか結果が出ないなんてことはよくある話。

それでも、自分のやりたいことのためなら、もがき続けろ!

考えろ!

そして、動け!

この小説を一言で表すならまさにこのフレーズ。

「生きている限りバッドエンドはない」

死ぬまではまだまだ途中なんだ。