映画「君の名は。」がついに興行収入200億円突破したそうで。
なんかもうエラいことになってきましたなー。
監督も含めて、誰もこれほどまでヒットするとは思ってなかったやろね。
実はボク、上京して3年間はアニメの制作をやってました。
そんな業界経験者から見ても、本当によくできた映画だなーと思います。
なんやかんやで3回見に行ってるしね!
脚本、背景、キャラクター、音楽。
どれをとっても本当に丁寧に作り込んである。
こういう手の込んだアニメがジブリ以外で作られたってのが、驚きです
改めて日本のアニメのおもしろさを思い知らされましたわ。
そして、アニメといえばやっぱ作画。
今回はキャラクターや背景などの絵作りに大きな影響を与えた、作画監督である安藤雅司に注目していきます。
もくじ
作画監督って何やってる人?
日本のほとんどのアニメは手描きで作られています。
途中からコンピューターグラフィックスで処理を入れたりはするものの、始まりは1本の線を引くところから。
あらゆるものが機械化されていく中で、いまだに手描きアニメを作り続けているのが日本のアニメ業界のすごさだったりするんですよねぇ。
で。
登場人物の1シーンの動きと背景の下絵を描いたものを原画。
原画を描く人のことを原画マン(アニメーター)と呼びます。
映画の制作が始まると原画マンが分担して作業にあたります。
劇場作品だと1000カット以上は普通です。
そうなると参加する人数も50人近くになることも。
そんなすべての原画マンを取りまとめる存在が作画監督という役職です。
監督の支持のもと、スタッフと打ち合わせをして、すべてのカットの登場人物と背景をチェックし、時には修正作業もやる。
実際に手を動かしてやる作業としては監督よりも多いかもしれません。
作画監督の腕次第でキャラクターの表情や動き、空間表現などは大きく左右されます。
つまり、実際に画面に映る絵についての総責任者。
それが作画監督です。
いくら超有名監督がおもしろい脚本で作っても、実際の映像のクオリティが低かったら物語どころじゃないですよねー。
逆に、物語がありきたりでも、作画監督が有名な方だったらなんか安心して見れたりします。
業界的には超重要な作画監督ですが、一般的にはほぼ無名。
みんな監督の名前は知ってるけど、それ以外のスタッフの名前ってほとんど印象に残ってない。
それってちょっともったいない気がします。
安藤雅司という男
「君の名は。」の作画監督は安藤雅司さん。
スタジオジブリに入社し、若くして頭角を現して、今や業界ではトップクラスの作画マン。
安藤さんの仕事っぷりについては新海監督も絶賛されてます。
田中さん(キャラクターデザイン担当の田中将賀)のキャラクターの深夜アニメ的な「エッジ」な部分というか、コアなファンはいるけどアニメファン以外にはまだそんなに馴染みがない絵というものを、田中さんとは違う世界でずっとやってきたジブリの人たちが動かしたというところの新鮮味は、画面を観ているだけであるような気がします。
田中さんのキャラクターでも100%彼の絵というわけじゃなく、安藤さんの解釈が入ったことでやっぱり少し「大衆向き」に柔らかくなっているし。また一方で、それ以外の作画マンの方々もやはりジブリ出身の方がたくさんいらっしゃって、そういう方々が描くとやはりジブリ寄りの絵になるわけです。それをまた、作画監督の安藤さんがぐっと田中さん側に引き寄せる。
そういう綱引きの中で産まれてきた絵が、観てみると、日本のアニメーションのいろんな文脈を豊かに含んでいる。本当に複雑な味わいがある画面になっていると思うんですよね。
引用: 新海誠監督インタビュー
正直、文字で表現するより見てもらった方が早いのでこれまで安藤さんが作画監督として参加されている作品の一部をまとめてみました。
もののけ姫(1997年)宮崎駿監督
Prinzessin Mononoke Trailer 5
記念すべき作画監督デビュー作品。
制作はもちろんスタジオジブリ。
若干28歳であの宮崎作品の作画監督を務めるなんてどんなけすごいんすか!
当時ボクは中学生で映画館で見て圧倒されました。
アニメの表現ってすごいんだ!と思わせてくれた作品でもあります。
千と千尋の神隠し(2001年)宮崎駿監督
2001 / 千と千尋の神隠し(予告編)
安藤雅司の名を改めて知らしめた作品。
興行的にも300億円を越え、日本歴代興行収入1位という大ヒット。
作画的にも神様がいっぱい出てきたり、飛んだり跳ねたり、婆さんの顔がデカかったりで大変なことになってます。
パプリカ(2006年)今敏監督
パプリカ(アニメ映画) 予告編
現実と夢の境界が入り交じって世界が崩壊しかかるというストーリー。
まさにアニメーションだからこそ表現できた作品です。
特に後半のパレードのシーンでは鬼気迫る狂気が画面からにじみ出とります。
ももへの手紙(2012年)沖浦啓之監督
映画『ももへの手紙』特報
島での暮らしという一見地味ながら、だからこそ必要になってくる日常の何気ない仕草が見所の作品。
またしてもイノシシや妖怪が出てきます。
もののけ姫の時から考えると、日本で最もイノシシを描いた作画マンって安藤さんじゃないの?
君の名は。(2016年)新海誠監督
「君の名は。」予告
見ればわかる。
まとめ
まとめてみて、安藤さんのすごさを改めて思い知らされました。
作品の賛否は個人の主観があるので置いておきますが、作画的に見るとすべての作品が膨大な量力を費やして描かれたことがわかります。
自然表現や大量のキャラがザワザワ動きまくる様子はまさに圧巻。
そして何と言っても、安藤さんの持ち味は日常のリアルな芝居。
派手で目立つものではないですが、手抜きのない当たり前の表現が映画全体のリアリティを支えてくれています。
映像だけでなく、安藤さんの線のタッチそのものが見たい方にはこちらがオススメ。
完成してしまうと中々分からない線の勢いなんかは、やっぱり原画で見るしかありません。
止め絵だとしても緻密な作画には思わず見入ってしまうはず。
作画監督安藤雅司の仕事っぷりをぜひともご堪能くださいませ!!
君の名は。 Another Side:Earthbound (角川スニーカー文庫)
「君の名は。」小説版もけっこういいです。
特に「君の名は。Another Side:Eartbound」では本編に入りきらなかった設定やエピソードが出てくるので、映画をより深く理解するためには必読です!
まいどおおきに!